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TKC刊「戦略経営者」(月刊誌)

戦略経営者「行列のできる工務店の社長覚書」

「“家守り”が工務店の腕の見せどころ」

戦略経営者「行列のできる工務店の社長覚書」
2010年7月号 No.285 TKC

 私たちの未来、そして地球のために、住まいに関する新しい考え方が必要になってきた。それが住宅の「長寿命化」という考え方だ。
 驚異的なスピードで進行する高齢化社会への対応、そして、地球温暖化現象を食い止めるためのCO2削減は、現代社会に突き付けられた課題だ。建築業界には、住宅の長寿命化を推し進め、新築時に発生する産業廃棄物の削減や資源の無駄使いを少なくすることが求められている。
 「いい家をつくって、きちんと手入れして、長く大切に使う」というスローガンで昨年6月に施行された「長期優良住宅の促進に関する法律」は、長い間続いてきたスクラップ&ビルドの住宅供給に事実上“三行半”を突き付けた。住宅は長く大切に住み継がれ、しっかりバトンリレーをすること。そのために住まいの維持・メンテナンスが重要な課題となり、その結果として土地だけではなく、良い住まいはしっかり評価されるべき時代が到来したことを意味する。
 住宅数が世帯数を大きく上回り、空家数が700万戸(2003年時点で703万戸:総務省調査)にも及んでいることと、日本の住宅の耐用年数が欧米先進国に比べて極端に短いという事実を鑑み、思い切って発想の転換を図れば、生き残りのために必要な「次の手」が見えてくる。それは、住宅の長寿命化に真剣に向き合い、既存住宅の定期点検や適切なメンテナンスを行なう“家守り”事業化の可能性でもある。
 しかしながら、一般的に当たり前と思われがちな家守りの体制づくりは、実際には一夜漬けではできない。その場凌ぎの対応と「言ったもの勝ち」の業界慣習に中小工務店の脆弱な経営基盤が相まって、現実的に取り組む工務店はいまだ少ないのが実状だ。その理由は二つ。まず、自社で建てたOB客を訪問しようものなら、いろいろな不具合を指摘され、無償補修を余儀なくされると受け止めがちな厭世的な発想が一つ。もうひとつは、新築工事請負時点で、自社の特徴を活かせずに価格競争だけに巻き込まれてしまい、請け負った仕事の将来にわたる点検や補修費等へ充当する資金的余裕がないことが挙げられる。
 弊社はこのような課題を克服し、一年ほど前からようやく「家守り」の専任者を配置することができた。これは住宅の長寿命化とお客様の大切な財産の保全、さらにOB客から紹介が増えることを願って開始したサービスだ。
 ここで当社が「家守り」事業で実行しているポイントは次の5つである。

 (1)引渡し時に、確認申請書類や図面などの重要書類を、第三者情報サービス機関へPDFデータで預け、必要な時に住宅履歴情報として活用する。
 (2)専任担当者が隔月で「家守り通信」というタイトルのコミュニケーション誌を発行する。
 (3)引渡し時に約束した、1年・2年・5年・10年点検の着実な履行。
 (4)メンテナンス工事やちょっとした営繕工事も積極的に請ける。
 (5)最終的には、家守りがOB施主との確固たる人間関係を構築し、紹介客を増やすなど、当社の将来の営業面を担う。

 従来は、施工担当した現場監督が現在進行中の現場の合間を見計らって、点検やメンテナンスをしていた。だが専門の部署を設置することで、計画的に家守りができるようになった。また、できる限り素早く、細かい要望にも応えることができるようになり、思った以上に効果が上がり始めている。
OB施主からの方々からは、「待っていましたよ」「ついでにここも修理してほしい」などの声を多数頂いた。さらに、近隣の家庭をご紹介いただくなどの効果も出始めている。
ただ、家守り専任部門は仕事の性質上、メンテナンス契約などを締結し、年会費を回収する仕組みをつくり、うまく回さないと、単独では収支上赤字部門となりがちである。今後はOB客との絆をさらに深めると共に、新たな家守りサービスの創出、管理工務店不在住宅の囲い込み、さらに家守り部門による紹介客受注の人事評価法の構築などを推し進めていきたい。家は建ててしまえば終わりではない。引渡しを終えてからこそが工務店の腕の見せどころだと、私は考えている。

清水 康弘

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