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連載「デュアルライフ」

植木と外構

 ようやく建物が完成し、次に考えなければならないのは植木と外構などの外回り、室内の家電製品やテーブルなどの家具、カーテンなどを検討し、手配することだ。
 建築前の敷地は別荘地にもかかわらず、日本の山林の実情の縮図のごとく、間伐などの手入れをした形跡がない鬱蒼とした松林だった。
 またまた話は脱線してしまうが、日本の国土の68%を森林面積が占め(北欧フィンランドが73%)、そのうちの約40%が杉などの人工林だ。人伝えに聞いた話だが、10年ほど前に圏央道のあきる野ICの開通セレモニーに訪れた元東京都知事のI氏が、近間に見える山から、黄色い粉が煙のように立ち上る様子を目の当たりにして、春先になると杉林のせいで日本のビジネスマンが花粉症にかかり、日本経済が数カ月停滞してしまうのは由々しき事態だと言及し、それを契機に東京の木を活用しようと多摩産材認証制度が始まったと言われている。
 別荘地の方は杉ではないもののカラマツやアカマツなどを戦後復興のために密植された針葉樹が占め、我が先と言わんばかりに光合成による樹種の存命を求めてヒョロヒョロと上へ上へとひ弱に伸びきっていた。幹が細く天に向かってひたすら伸びた樹木は、微風にユラユラ揺れながらキシキシ軋んでいるようだった。
 前述したことだが、およそ300坪の敷地に生えていた数十本の針葉樹は、建物を建てる前にすべて伐採してしまった。建物が完成し森の中にポツンと区画だけ、トドワラ(立ち枯れたトドマツの残骸が湿原上に立ち残り、荒涼とした特異な風景を形作り、北海道の有名観光地になっている)が出現したようだった。
 まずは植樹と外構工事を進めるため、Hさんに頼んで造園業者を紹介してもらった。もちろん、針葉樹をすべて伐採してしまったのだから、瑞々しい広葉樹の森に戻すのがミッションだ。
 諏訪植木のOさんは軽トラックに乗って現れた。華奢な体型で身軽そうな真っ黒に日焼けした還暦周りの職人風の御仁だ。
 土地の値段がバカ高い都心部では、コストパフォーマンス上、敷地一杯に家を建てるのが一般的だ。猫の額ほどに減った敷地の余白部分に四季を感じることができるシンボリツリーを植えて建物に同化させ、外観を引き立たせるのが僕らの仕事の腕の見せ所だ。しかし、土地が広い別荘地は真逆の発想が求められる。つまり森の中に家が建っている絵面を想像しなければならないのだ。それも植林した木々が大きく育った時のイメージも大いに必要になるのだ。樹種や樹齢などを考えているうちに、森と言えるまでに木が育った時には僕自身がこの世に存在していないことがわかった。
 植木屋のOさんに図面を拡げて相談を始めた僕は、トドワラを広葉樹の森に戻す小さなプロジェクトが始まったという気持ちでいた。

                                            ・・・つづく

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