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連載「デュアルライフ」

理由(わけ)

 さて、どうして僕がこのようなよもや話に乗ってしまったかと言えば、もちろんHさんの人間性や人徳は当然のこと、他にもいろいろ理由があった。
 まずそのひとつに僕の出身地が北海道旭川であること。空気が澄み切った季節になると、頂が雪に覆われた大雪山連峰を見ることができ、車で30分走れば、連峰をバックに小高い丘が不規則に連続した景色を堪能できる美瑛やドラマ「北の国から」で話題になった富良野があり、さだまさしのハミングが四季折々の楽しみを運んでくれるようなそんな土地柄だった。
 今では都会暮らしが田舎で過ごした時間を大きく追い越してしまったとは言え、雄大な自然に育まれながら過ごした少年時代は何故か加齢していく毎にフラッシュバックする機会が増えてきたように思うようになった。いつか仕事を引退する時が来たら北海道へ帰るか、もしくは山々に囲まれたどこかの地で暮らしてみたいと漠然と考えるようになってきた。そもそもこのプランに具体性や実現性の根拠は無く、ただ何となくであるが。

大雪山連峰(北海道)
八ヶ岳連峰(長野)

北海道の大雪山連峰(左)と長野の八ヶ岳連峰(右)

 さらにもうひとつ僕の背中を押すことになったのは2011年3月11日のあの出来事だ。
 震災後、数週間が過ぎてもなお東日本全体がこのままどうなってしまうのだろうと誰もが感じたことと思う。当時は「想定外」という言葉が世の中に蔓延していたが、僕自身も工務店経営者、中小企業経営者の端くれ者として万一の時の想定を意識せざるを得ない心理状況になっていった。

 東北道が復旧してすぐに当社の現場監督を連れて訪ねた宮城県女川町。被災地の深くへ入るほど無口になっていく現場監督に対し、正直言って皆へ掛ける言葉を失っていったことを思い出す。車窓から静かな映像のように見える津波で倒壊した手付かずの建物を眺めながら、結果的に人間の無力さを思い知らされたのだった。

 周知の通りしばらくは東京にいても余震が相次ぎ、不安な日々を過ごしていたが、何となく漠然とした意識の中で少し離れた場所に「第二の拠点」があればというイメージが芽生え始めていたのではないだろうか。
 このようなことを考えていた時だったからこそ、よもや話にすっかりはまってしまったのだという言い訳が僕自身の中で辻褄が合う。
 当初は美濃戸高原でTさんの隣人になることを覚悟(笑)して、建築計画を進めようとしていたのだが、家族に内緒のまま進めるのは後になると気まずいので、これまでのことを話したところ、思いがけない反応があり、計画地を再び探すことになってしまった。
 これは隣人になることを喜んでいたTさんへの裏切り行為の始まりでもある。
                                            ・・・つづく

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