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新建新聞社刊「新建ハウジング・プラスワン」(月刊誌)

新建ハウジング・プラスワン「私的工務店論」

私的工務店論・第4回
「決算書は社長の成績表」

新建ハウジング・プラスワン「私的工務店論」
2009年5月号 新建新聞社

 子を持つ親であれば、時には遊びばかりに夢中になって成績が振るわない子供に、「今しかないのだからしっかり勉強しなさい」などと、叱咤激励したくなる時もあるだろう。
親の子供に対する思いとは裏腹に、会社の決算期を迎えると、今度は社長として、決算書という名の成績表を突き付けられる番が訪れる。
 こちらの成績表だけは、周囲に叱ってくれる人もなく、ただただ結果を真摯に受け止め、経営者としての責任を全うするしかない。大きな赤字を出そうものなら、付き合ってきた銀行からも見放され、場合によっては協力業者や信じていた(と思い込んでいた)社員からも見放されるのが落ちである。 昨年末の話だが、ある住宅会社の経営者が私を訪ねてきた。事前の情報では、受注は順調だが、資金繰りが上手くいっていないということだった。
 実際にお会いして話を聞いてみると驚いてしまった。

 1.現場がぐしゃぐしゃで収益があがらない
 2.現在は実績づくりが大切なので低利益でも受注を優先している
 3.数カ月前に大きな投資を行い、新店舗をオープンしたばかりである
 4.資金繰りが難しく思うように業者に支払ができない。

 実はこのような話を聞く前に、私を驚いた大きな理由があった。それは見るからに千数百万円を下らない高級外車に乗って登場したことである。
 「資金繰りの相談をする前に、乗ってきた高級外車を手放した方が良いのではないですか?」
 「良い車に乗るのが自分の夢だったので・・。それにこのような厳しいことを言われたのは初めてです。」
 彼は怒りで少し紅潮した面持ちできっぱりと言い返してきた。
 経営者としての公私混同振りに呆れ返り、それ以上話をする気はなくなったのだが、同行してきた真面目そうな社員に同情したので、弊社の資金繰り表や事業計画、月次決算などの資料を見ていただいた。
 この時に話した内容をかいつまんでまとめ、弊社が創業からどのようなことに留意して経営してきたか、話を進めていきたい。

 1. 事業計画書を作成する

 決算上の期末時点で翌期の事業計画書を作成するのは当たり前のことだと考えている。設計施工を生業とするのであれば、営業段階から実施設計、確認申請、施工、引き渡しまでの期間が短くて1年~1年半を要する。翌期の経営情報は、受注残をスケジュール化し、計数化することで、すでにほぼ確定していると言っても過言ではない。
 しっかり紙ベースにまとめて損益分岐点を把握することで、経営上の問題点や目標も明確になり、行動も伴ってくる。また、目標を社員と共有でき、評価のベースが完成する。
後は、予定利益と実績の乖離をどのように埋めてゆくか思考し、行動するだけである。

 2. キャッシュフロー(資金繰り)表を作成する。

 事業計画を作成したら、次はキャッシュフロー表を作成する。請負契約時に約束した支払い条件と工程をにらみ、入金予定、変動費の出金(支払い原価)と固定費(人件費や家賃、広告宣伝費などの販売管理費)をエクセルなどの表にまとめる。
 私は創業時から、6カ月から8カ月先までの表を作成していた。継続して行うことで、お金に慌てることなく、日常業務に専念できたと思う。
 ここで気をつけなければならないのは、収益と資金繰りは別の動きをするということだ。受注棟数が増えていく段階で陥りがちな問題は、仕事を受注できているのに、資金が追い付かないという、回転型経営に陥ってしまうことだ。
 我々のような「つくってなんぼ」という業態においては、急激に成長させないことが大切で、緩やかな成長を指向することが基本となる。

 3. 月次決算は必ず行う

 良く聞き話だが、一般的に工務店の経理はずさんだ。領収書や入出金伝票などを、顧問税理士へすべて送付し、経理業務を外注しているケースが多いように思う。
 まだ数人の規模であれば、専門の経理担当者を置く余力も無く、外注先に依存しても仕方ないが、月次決算は必要不可欠となる。おおまかな計数でも良いから、月ごとに販売管理費の推移や経費などの問題点を把握することで、目標に向かって修正が可能となり、収益と資金繰りなどのバランスも把握することができる。

 「私的工務店論」というタイトルから甚だ乖離した話になりつつあるが、私自身も未だ道半ばで、決して人様に誇れる経営状況とは言えない。しかし、住まい手がハウスメーカーに頼めば安心、工務店に頼むのは不安と言われながら市場が縮小してゆく所以は、工務店の自転車操業的な経営にも問題があるという信念は曲げたくない。
 自社でつくっている家をどんなに自画自賛したところで、脆弱な経営を続けているだけでは、住まい手から信頼を勝ち取れず、陽が当たる業態とはなり得ないのではないか?
 100年に一度と言われる大不況の最中、仕事が減り、職人は溢れている。さらに工務店の廃業や倒産も相次いでいる。このままでは、日本の住宅産業自体が消滅してしまう。このような危惧を抱くのは私だけだろうか?
 毎期まとめる決算書は、社長の成績表である。快適で安心して住まうことができる良い家をつくるのと同様に、美しい決算書をまとめられるようにしたいものだ。
 「工務店にも経営を」。これが私自身への戒めと、日々現場の対応に追われる同志へのメッセージである。

清水 康弘

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