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TKC刊「戦略経営者」(月刊誌)

戦略経営者「行列のできる工務店の社長覚書」

「大手ハウスメーカーに勝つ秘策とは」

戦略経営者「行列のできる工務店の社長覚書」
2010年4月号 No.282 TKC

 住宅着工80万戸時代のサバイバルへ、警鐘が鳴り響き始めて久しい。ところが、対岸で発生した世界金融恐慌という大津波は委細かまわず業界を呑み込み込んでしまった。
 実は、机上の着工戸数減少のシナリオは、少子高齢化による需要減や地球温暖化に対応した脱スクラップ&ビルドを掲げる国策によって緩やかな減少曲線を描きながら収束してゆくというのがもっぱらの定説だったのだ。
 しかし予測を遥かに超えた大不況により、買い控えを決め込んだ消費者心理に対応できない住宅メーカーが規模の大小を問わず市場から消えていった。まさに一瞬の出来事だった。
 さらに言えば、住宅業界はリーマンショックの数年前から確認申請の厳格化、住生活基本法、瑕疵担保責任履行確保法、長期優良住宅に関する法律など新法施行ラッシュが続き、法対応に疎い工務店は既に淘汰の波に晒されていたのである。まさに「中小工務店受難の時代」・・・。
 とはいえ、新築住宅事業は政策の影響を受けやすいことを認識し、情報分析の精度を上げるなど内部態勢を強化していれば、ある程度危機を回避することはできたはずだ。 
 弊社はこの数年間で、設計から施工段階のコンプライアンス体制を構築するとともに、先細りの住宅市場に対応するため大手メーカーと遜色のない品質を担保する部材や施工ディテールの標準化を徹底してきた。また、並行して耐震性能や温熱環境性能など、性能評価基準においても高いレベルの家づくりを目指してきた。
 これらは国が始動させた「長期優良住宅法」に対応した技術戦略だが、法施行に先駆けて2008年から国土交通省が募集した長期優良住宅先導モデル事業(補助金事業)へも積極的に応募し、2年連続して難関を突破。大手メーカーと品質、性能面で肩を並べることができたと思っている。
 この「モデル事業」認定で、高く評価されたのは「水平パートナー」という考え方だ。具体的には、弊社と商圏を同じくする創建舎、田中工務店、岡庭建設との経済・技術的相互補完で、住宅完成保証制度や統一メンテナンスなどを実践すべく立ち上げた「東京家づくり工務店の会(略称:TO-IZ)」である。
 通常同じ地域にある工務店は同業者同士の面倒な競合を避けようと、情報共有や協働を嫌う経営者が多い。しかし、私にはその殆どは、閉塞的な情報を頑なに信奉しているか、または自分が知り得なかった事実に目を背けているだけにしか思えなかった。
 そもそも、これまで住宅技術にハイテク産業のような劇的なイノベーションが起きたことはなく、あくまで既存技術を組み合わせ、それらを定量的・科学的に理解しながら自社の技術に活用することが優先される。要は、同業者同士の情報交換を避ける積極的理由はないのである。
 私は、TO-IZ内で発生する競合は、プレゼン力を試し、他流試合に強くなる絶好の機会だと捉えている。競争を避けて目先の売上をつくるよりも、勝ち負けから学ぶことの方により意味がある。
 今までのように「この指とまれ」方式で工務店から利益を吸い上げてきたフライチャイズやネットワークから解き放たれ、工務店同士が自らの意志で「集まる」ことで、情報の精度がとスピードは格段と向上する。このような「ミニパートナーシップ」の取組は全国の地域工務店へ徐々に波及しつつあるが、今後はより爆発的な広がりも期待できると思う。
 小規模工務店はもともと巧みの技術、つまり「つくり込み」への自負を持っている。大手メーカーの工業化では表現できない職人のワザをしっかりインテリアデザインに残し、「こだわり」を表現することで、住まい手の感性を刺激することができる。
 しかし、そのためには小規模工務店同士が地域で手をつなぎ、お互いに足りないモノを補完し合い、技術面においては「経験と科学のバランス」をしっかり整え、まっすぐに正直に住まい手と向き合うことが必要だと、私は確信している。
 それこそが、大手メーカーに勝つためのほとんど唯一の秘訣だと思う。

清水 康弘

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